富山大橋の渡り納め式  



2012年8月26日、旧富山大橋の渡り納め式が開催され、昭和11年以来76年間、富山市民に親しまれて来た橋にお別れを告げた。新橋の設計段階から、富山県土木部において企画されたこの素晴らしい催しが全国に広がってくれることを希望しつつ、ご紹介まで。8/1の夜には神通川花火大会の見物席として解放もされた。(新しい橋は3月に開通済。旧橋の撤去工事は渇水期の秋から始まり、3カ年の予定。)

2012.0827

Vancouver の興味深い橋梁群  


Vancouverの橋が面白いことになっている、ことに最近気がついた。

これまでは、都市のアイコンとしても著名なLions Gate Bridge、観光パンフレットに必ず出てくるCapilano Suspension Bridge、あるいは、合成床版の斜張橋(最大支間465m)のパイオニアであるAlex Fraser Bridge(1986)位しか知らなかったのだが、ひょんなことから、調べてみるといろいろ興味深い橋があることに気がついた。まず、Skybridge(1990)。これはバンクーバーのLRT「SkyTrain」のための最大支間340mの斜張橋。そういえば、雑誌で時々見かけていたが、ここにあったんだ...


Golden Ears Bridge(2009)はPPPのスキーム(35年間?)で民間資金で建設された有料橋で、最大支間244mの5径間連続斜張橋。アレックスフレーザー橋と同じく合成床版のようだ。Pitt River Bridge(2009)は最大支間190m、3本の塔列が印象的な斜張橋で、既存橋梁(船舶通行のための回転橋)の架け替え事業である。Coast Meridian Overpass(2010)は鉄道の貨物基地を跨ぐ新設の5径間連続斜張橋で、ミヨー橋のような送り出し架設で建設されている。new Port Mann Bridge(建設中)は10レーンもの広幅員の3径間斜張橋(最大支間470m)で、最近中央径間の閉合まで建設は進んでいる模様である。


ここまで、フレーザー川を跨ぐ大きな橋の架け替えやら新設の橋を見て来たが、空港の周りにも、自動車のための橋ばかりでなく、「SkyTrain」の路線拡充のためのNorth Arm Bridgeなども新しく架けられている。


細かく見ていくと橋の造形面でも、Cambie Bridge(1986)など、欧州の影響を感じさせる丁寧なディテールも散見される。また、観光地には世界的に大流行りのtree top walkにヒントを得たようなcliffwalkも新設されており、橋の博物館の様相を呈している。いったい、バンクーバーの橋を取り巻く世界で何が起こっているの?

一般論としては、そもそも、カナダ最大の港にして、トロントに次ぐ産業都市であり、観光業も盛んで住みやすい都市であったところに、1997年香港の中国への返還に伴う中国系移民の増大による経済規模の拡大、2010年冬季オリンピックに向けたインフラ整備機運の盛り上がり、さらには、ここ10年程右肩上がりで来たアジアの経済発展における恩恵を最大限受けて来たこと、などを背景として人口も経済規模も伸び盛りであったことは抑えておかないといけないだろう。
その上で、1972年に設立されたバンクーバーに本社をおくBuckland & Taylor Ltd. という橋梁設計会社の存在に着目したい。今回紹介した Alex Fraser Bridge(1986)、Skybridge(1990)、Golden Ears Bridge(2009)、North Arm Bridge(2009)、等を手がけた会社であり、現在はCOWIの傘下にある。この会社がどのような役割を果たしたかは、判らないが、そうゆう会社の存在は何らかの影響をあたえたと思う。これからも、時々に注目していこうと思う。

なお、バンクーバーには、Port Mann Bridge(1964)Ironworkers Memorial Second Narrows Crossing(1957)Granville Street Bridge(1954)Burrard Bridge(1932)など、古き良き時代を偲ばせる橋もたくさんあることを付記しておく。

2012.08.05

ミヨー高架橋から土木事業の広報を考える  


パリから地中海に抜ける高速道路A75の一部として、2004年に開通したミヨー高架橋(2460m)は、民間資金で建設・運営されている。事業運営権(75年)を国から譲渡された民間会社が自ら資金を調達し、この橋を渡る料金収入で建設費420億円を含む維持管理費全てを賄う。基本設計はミシェル・ヴィルロジェ、デザインはノーマン・フォスターで、美しくエレガントな橋に仕上がっている。

さて、この橋の袂にあるサービスエリアに入って、驚いた。この新設された高速道路A75のそこかしこに建設された目玉となる構造物を写真や模型で説明するブースが設けられていたのである。それも上記写真に見るように、きれいにレイアウトされた、一般の方々にも十分見るに耐える展示になっている。ここではミヨー高架橋だけででなく、税金で建設された箇所をまんべんなく取り上げていた。

少し離れた建物の2階に上がって再び驚かされた。ミヨー高架橋の説明ブースになっていた。それも、コンペの際の案の模型までもが並べられている。橋梁技術者垂涎のスペースだ。ここでは、鞄、キーホルダー、ノート、建設経緯を記録したDVD、etc... ミヨー高架橋のさまざまなグッズも販売されていた。ミヨー市の産業全般を紹介したブースもあった。

昼時であったので、この辺りの郷土料理っぽい、そば粉のクレープを食したが、これがまたおいしい。サーモンやローストビーフ、等いろいろな種類もあったし、店員さんはマニュアルで働かされているバイトというよりも、地元の女性達が生き生きと働いている感じもあって、好感も持てた。

このサービスエリア全体がミヨー市、あるいはミヨーのNPO等によって運営されているのかもしれない。いずれにせよ、企業臭の少ない親しみやすい雰囲気であった。

そして、これらが全て計算されたものだとしたら、ミヨー高架橋を取り巻く広報戦略、そして、建設に関わるプランニングも相当なもんだと思う。これは司令塔が存在しなければ、なし得ない成果で、今の日本では到底出来ない類いの仕事だと思った。技術も、もてなしの心も、一つ一つは負けていないと思うし、ひょっとすると日本の方が上かもしれないが、それらの諸要素をまとめあげて、トータルとしてブランディングする力は、まだまだ見習わないといけない、と痛感した次第。

なお、ミヨー橋の真下には情報館(VIADUC ESPACE INFO)があり、ミヨー橋の維持管理通路を歩く探検?ツアーも用意されているので、興味のある方はその時間も確保して訪ねてみて下さい。

2012.07.04

Your Rainbow Panorama by Olafur Eliasson



Your Rainbow Panorama by Olafur Eliasson。デンマークのアロス・オーフス・アートミュージアムの屋上に2011年に完成したものだそうだ。
直径52m、全長150mの空中歩廊。三角形の桁断面、床への照明埋込み、ガラスサッシのディテール等、構造物としても洗煉されていて、興味深い作品だ。
少し詳しく眺めたい方はこちらをどうぞ。YouTube(写真はここから引用)

2012.02.11  

My Favorite Bridges [2]  Jan-Wellem-Platz Elevated Road


お気に入りの橋:第2回目は、エンジニア;レオンハルト他とアーキテクト;F.タマスの共同設計のヤン・ベラム・プラッツ高架橋(1962)。

約50年も前のものだとは思えない、この橋に初めて知ったのは1982年、大学研究室で見たレオンハルト著「Brücken / Aesthetics and Design」に掲載されていた写真。こんなにきれいな高架橋があるんだと感心し、さっそく翌83年のバックパッカー旅行で実物を見に行った。その時の写真が左端のもの。デュッセルドルフを訪れたのが日曜日だったため、商業施設はお休みで賑わいは体験できなかったが、デザインディテール、橋桁がトラム停留所の屋根のような役目を担っていること、等いろいろと勉強になった。(その他の写真はネットから拝借)

特にメタル橋脚にコンクリートの橋桁という組み合わせは、地震国の日本では受け入れがたいかも知れないが、足を細くして、天井を魅力的な形に仕上げるという意味では、誠に理にかなった組み合わせだ。類似事例として、カラトラバのシュタデルホーフェン駅を紹介しておこう。

さて、高架橋としてはきれいな部類に入るこの橋だが、都市の空を塞ぐ厄介者であることには変わらず、街の再開発の流れの中でトンネル道路に置き換えられるようだ。これについては次のエントリーで...

2011.04.10  

My Favorite Bridges [1]  Töss Footbridge


時々、お気に入りの橋を紹介することにした。
第一回目は、マイヤール設計のテスの人道橋。大学図書館でこの写真を見て、感動した気持ちがそのまま昂じて橋の世界を志した、個人的に忘れ得ぬ橋である。今は右隣の写真(重山氏のサイトより拝借)ように全景を望めないようで、残念な限り。(支間は38mと結構なもの)

1933年完成と言うから、サルギナトーベル橋の3年後、マイヤール61歳の時の橋。曲線をうまく処理したシュバントバッハ橋も1933年の完成。遅咲きのマイヤールの代表作が量産された年代の作品の一つである。

ということは、後に知ったのであって、初めて見た時には、ただその美しさに見とれたのである。路面両端の梁をランガーのように補剛する薄板のアーチ構造の構成。視覚的にも実にバランスが良い。

がしかし、←この写真(google street view)から判るように、傾斜堤防に接続する1パネルを歩道拡幅のために擁壁内側に埋め込んだために、この橋の軽快さを印象づける端部の納まりが損なわれることになっていて、この点もまた、残念な限りである。

2011.04.09  

剛性配分の妙?



スペインの設計事務所Anta Ingeniería Civilの桁橋デザインを紹介する。

見ての通り、構造モデル的には、ただの桁構造である。が、桁剛性の配分と桁断面構成にひとひねりを加えて、見た目の印象を改善?している。ミムラム氏のトゥールーズの橋も丁度こんな感じのひねりがあったが、それをこれでもかと言うぐらい、多くの橋で展開しているのが、この事務所。

Shaping Forces (Laurent Ney)講演会



2010.11.09,京都大学桂キャンパスにて、ベルギーの構造デザイナー、ローラン・ネイ氏(Laurent Ney)の講演会を聴いてきた。2008.11.12の東大での講演会以来の2年ぶり2回目の聴講となった。
(写真はネイ氏のHPから、ポスターは京大HPから)また、ブリュッセルでの展覧会のインタビュービデオはこちら

講演会の枕部分は2年前と同じで「intuition」を大事に、というところからの展開。当然ながら、設計態度や主張の展開は同じなれど、紹介される橋は最近の事例が織り交ぜられて新鮮なモノとなっており、楽しめた。

今回は、構造デザインの話よりも、発注者の設計条件やそれをネイ氏がどのように解釈したかの話しに重点が置かれていたいように感じた。まぁ、そうゆう事を含めて形を探っていくのが設計作業そのものであり、楽しみなのであるが、そういった認識が世間に少ないのは欧州も日本も同じなのだろう。ただ、我が国の構想力や技術力が彼らに劣っているとは全く思わないが、文化行事のようなコンペの存在や、そもそもコンペにより設計者を選定するという制度のあり方など設計を取り巻く環境面で、大きく水をあけられてしまっていることを再認識させられた。

このへんの改革も、土木人としてやらねばならない仕事であるな、とおもいながら会場を後にした。

なお、今回の来日には、昨年からLaurent Ney事務所に勤務する若き日本人アーキテクトの渡邉氏が同行し、講演の要約和訳など、ボスの世話を焼いていた。そんな彼が、欧州の日々を綴ったBlogを「おすすめBLOG」に紹介したので、興味ある方はどうぞ。

Kew Garden TreeTop Bridge 2008



ロンドン郊外のKewGardenに設置された地上18mに位置するTreeTopWalkway。一周約200mで、支間約15mのユニットが10基連なる。構造は全面的に耐候性鋼材が用いられている。基礎杭(RC)は既存木の根の位置をレーダー等で探索の上、避けて設置されている。トラス斜材の配置には植物の生長パターンにみられるフィナボッチ数列を援用したとされる。設計チームはロンドンアイを手がけた Marks Barfield with Jane Wernick Associates.

シンプルな造型は、空中散歩に集中する意味でも好感が持てるし、ディテールをしっかり追い込んでいる構造にも敬意を払いたい。個人的にも好きな橋です。

なお、橋の名前にはXSTRATA TreeTopWalkwayと、冠に企業名が付く。世界的な鉱山開発企業で2002年に上場以降積極的な買収攻勢をかけて急成長してきた企業である。PPPが盛んな英国ならではの光景であるが、どの程度の出資をしているのかは、現時点では未調査で不明。

90年代半ばにオーストラリアあたりから見かけるようになった「TreeTopWalkway」という、自然との親しみ方はすでに定着期を迎えつつあるように思う。こうして、私たちはまた、新たな視点場を生活空間の中に取り込んでいく。

Liberty Bridge at Falls Park, Greenville, USA


2004年に竣工した歩道橋で、アメリカ東海岸の南側にあるサウスカロライナ州にある(map)。
設計者は、アメリカでのここ最近の活躍が目立っている Miguel Rosales氏。
エンジニアリングにはシュライヒ事務所が参加している。

構造は見ての通りシュライヒそのもので、Miguel Rosales氏の事務所は、アーバンデザイン全般を担当したものと推察される。写真で見る限り、適切な計画だと思う。詳しくは(パンフレット)をご覧ください。

Miguel Rosales氏は、1961年、ガテマラ出身で地元の大学を経てMITを卒業し自身の会社を興している。ボストンのBigDigことCentral Artery/Tunnel Projectに参画して、橋梁デザインなどで名を馳せたらしく、このあたりから、橋のデザインの周辺での活躍が目立ち始めている。経歴を見るとアーキテクトとして、primary designに強いようであるが、橋梁基本構想、といった仕事が彼の地では良くあるのかも知れない。(このあたりは現在のところよく知りませんので、話半分でお読みください)

いずれにせよ、彼の仕事全般に言えることは、エンジニアとしてのオリジナリティを追求するのではなく、世界のデザイン潮流を良く理解・把握し、最新の知見に基づく計画やデザインを与えられたサイトに適用するのが上手な事務所のように見えます。コンサルタントとして、そのような事務所も大変有用である訳ですが、アーキテクトと構造デザイナーの役割分担や名誉の配分などでは、なかなか難しい問題をはらんでいるようにも感じました。ただ、そんなこと関係なく互いに信頼して、長所を持ち寄るのがコラボレーションの醍醐味ですので、本人達は何も気にしていないのだろうとも推察されます。なお、この橋はシュライヒのHPでも自身の作品(コンセプチュアルデザインと詳細デザインを担当した記述されています)として紹介されいています。

ムンバイのスカイウォーク


めざましい経済発展を遂げる、インドの西海岸に位置する人口1366万都市「ムンバイ」のスカイウォークを紹介する。(map)

この橋は鉄道駅とオフィス街を結ぶもので、長いもので3kmもあるという。駅の周りのスラム街、そして混雑の極みを見せる道路を避けて、通勤者を駅からオフィスへとスムーズに繋げるのが建設目的だそう。(ここここを参照ください。写真もそこから拝借しています。)

こんな橋の用途は初めてだが、障害物を克服する道具という意味で、まさに橋である。良いとか悪いとかではなく現実の解なのですね。いろいろと考えさせられます。

橋の渡り納め式...筑後川にかかる昭和橋で


2010年9月5日の日曜日、昭和4年に建設された昭和橋(うきは市)の撤去工事を前に、渡り納め式が地元有志の手で行われた。(福岡県庁HPより)

愛されてきたのですね、この橋は。.
一方、その隣に架けられたどことなく表情の乏しい新橋は、その寿命を終える時に同じようにいたわってもらえるだろうか? それが今から少し心配でもある....

餘部鉄橋、100年間お疲れ様でした。


着工は明治42年(1909)12月。100年を経て老朽化には勝てず、今年8月12日に世代交代をする。Mizen Head Bridge(下記)のようにレプリカとして形態保存される橋もあれば、架け替えられる橋もあり、悲喜こもごもである。(上記写真は知人からいただいた数年前にヘリから撮影したもの)

この橋の歴史的経緯についてはここを参照ください

Mizen Head Bridge(1910)の建替え / Ireland


アイルランド南西端にあるMizen岬灯台への連絡路として1910年に開通した橋(支間52m)が、100年を経て老朽化が限界にきたため、そのままの形で建替えられる事となった
現在は観光地としても人気のスポットとなっているようで、コンクリート黎明期の橋への敬意が十分に払われたという事だと思う。鉄筋にはステンレスが採用され、これからの150年間に耐えられるよう設計されるそうだ。

1910年にこれだけの鉄筋コンクリート橋がこのような辺境の地に出来ていたとは驚きだ。しかし、よく考えてみると、その当時、舟運が国家にとっても重要交通路であり、その安全を司る灯台建設において技術的にも先端を走る建設技術者がいた事は想像に難くない。そう、灯台も鉄筋コンクリートで作るに適した構造物でもあり、電気設備的にも難しい部類のものだったであろうから。
★蛇足ながら、コンクリートの歴史のおさらいはここを参照下さい。

Castleford bridge / UK, West Yorkshire


2008年7月の開通以来、2009 RIBA CABE(Commission for Architecture and the Built Environment) Public Space Award,他多くの賞に輝いたCastleford Bay Bridgeを紹介する。

設計はMcdowell + Bendettiで、2003年のコンペに勝ち抜いたもの
橋長は131m、最大支間26m、V字型橋脚支間9m、S字を描く二つの鋼箱桁寸法は500×400で、内一つは支間中央で1000mmの桁高に斬増しベンチの役割も果たすように工夫されている。桁高を極力低くくしたのは100年に一度の洪水にも堪えられるようにとのこと。デッキはクマルと呼ばれるブラジル産の超硬質木材が利用されている。(日本で名の知れている、ボンゴシやイペ材のようなもの)

街おこしのための橋のようであるが、堰の下流側の白濁した水流の中に白い橋脚を建て、そこから街の産業遺産であるmill(水車式製粉工場?)などがダイナミックに眺められる公共空間を見事に提供している橋であり、非常に好感が持てる。街の人々にも大いに愛されることだろう。

一方、我が国の場合、河川構造令の制限からほぼ無条件に小判型の橋脚がハイウォーターまで立ち上がってくるので、このような形態は望むべくも無いところが、何とも歯がゆい感じがする。英国の河川構造令を調べてみたいところだ。

Te Rewa Rewa bridge / New Zealand


2010年6月5日、ニュージーランドの北島、西海岸に位置する人口5万弱の街 NewPlymouth に新しい歩道橋が開通した。なかなかに興味深い橋なので、以下にHappyPontist 等からの情報をいくつかピックアップします。(上記写真もそこから拝借)

支間長は69m、設計は NZの首都ウェリントンにあるNovareDesign。架設は、近くのヤードでアバット部分以外を完成させ、両端のアバット部分を台車にのせて、現場までゴルフ場の横切って運搬。渡河すべき川にも台車ごと入って行き、ある程度のところでクレーン相吊りで引き上げてそれぞれの橋台に載せている。サンダーバードに出てくるような架設手順(YouTube)も面白い。

橋は海岸沿いの遊歩道を結ぶもので、これで、プリマスの住人の行動半径が飛躍的に広がる模様だ。富士山のような独立峰であるタラナキ山とのマッチングも楽しい。

(ニュージーランド:1000年以上前にポリネシアから移民してきたマオリとその後、入植してきたパケハ(ヨーロッパ人)、そして太平洋諸国やアジアからの移住者たちの影響を受け、ユニークでダイナミックな文化が形成されている、世界でも若い国のひとつ。)

Volgograd Bridge ..... 繰り返された失敗


2010年5月、ロシアの母なる川:ボルガ川を跨ぐ連続箱桁橋(2009年10月開通)が、30分に渡って風で振動(YouTube)し、一時的に閉鎖された。振幅は1mほどもあったという。その後の調査で構造的には問題なしということで、現在はまた供用が開始されたようである。(代替ルートは数十キロも離れた橋、あるいはフェリーとなるようで苦渋の決断だったのだろうと推察される。)監視は続けられ、同様の振動が発生した際は通行止めになる。抜本的解決のためには、風洞実験を実施し、整流版の設置あるいは構造補強が追加されるだろうと思われる。

1940年に起こった、かの有名なタコマ橋の落橋以来、桁構造の自励振動現象はほぼ解明されており、今頃、こんな失敗が起きるとは、ロシアの橋梁設計技術(情報)は遅れているのか?と思わざるを得ない。

と同時に我々の身の回りにおいて油断が無いか? 再点検しておこうとも思った次第。

都市内道路横断歩道橋 コンペ結果、Lisbon



ポルトガルの首都リスボンの環状2号線を跨ぐ歩行者自転車用橋のコンペが、2009年秋に実施(コンペHP)された。

応募要項に、The projects submitted have to reflect energy efficient solutions and have to be sustainable both at the levels of execution, maintenance and environmental solutions. The use of autonomous means of producing energy and innovative use of materials will be valued, as well as its urban integration and the surrounding landscape. とあり、下記に示す評価規準が設けられ、斬新な案が求められた。

EVALUATION CRITERIA AND WEIGHTING (評価規準と重み付け)

Urban Integration :30%
Quality of Architectual Work :20%
Feasibility/Cost Effectiveness :20%
Sustainability :15%
Conceptual Approach :15%

結果は下記の通りで、日本の横断歩道橋のようなものが優勝、続いてS字の橋、アーチ橋と続いた。
優勝:Telmo Cruz + Maximina Almeida + António Adão da Fonseca (PT)
2等:Moxon Architects Limited (GB)
3等:Impromptu Arquitectos + Selahattin Tuysuz Architecture (PT)

Four Mile Run Bridge コンペ結果、Virginia、USA



Four Mile Run とは川の名前で終端はポトマック川に注がれる。川沿いには遊歩道が整備されており、それらを相互に結びつける歩行者自転車用橋のコンペが、2009年秋から2010年春にかけて実施(コンペHP)された。

応募資格には、Teams of professionals including Architects, Landscape Architects, and Structural Engineers. とあり、建築、造園、構造の連合チームが要請されており、少なくとも60mから120m支間の橋が求められた。

結果は下記の通りで、上路式吊床版構造とでもいえるものが優勝、続いて曲線吊橋、曲線アーチ橋と続いた。
優勝:Arup / Grimshaw / Scape
2等:Olin / Buro Happold / Explorations Architecture / L’Observatoire International
3等:Rosales + Partners / Schlaich Bergermann and Partner / Simpson Gumpertz and Heger

上空が送電鉄塔で支配されているので、景観的には桁形式が良いと思うので、妥当な案が選定されたと思う。ただの桁構造だとつまらないので、あれこれ工夫をこらした案が選ばれたのだろうが、既視感のある構造デザインではある。床版とそれを補剛する構造の組み合わせは、ロンドンミレニアムブリッジ以来、アラップのパターンになっているようだ。  2010.04.25

Knokke Footbridge、Knokke-Heist、Belgium


観光地としても有名なブルージュから15kmほど離れた、北海に面した海辺のリゾート地クノック・ヘイスト(ベルギー)に2007年完成した歩道橋(地図)

形式は中央支間46m(側径間28m)の3径間連続梁で、12mmの鋼板をハンモックのように扱う部材構成が特徴。曲げ、せん断に対して最適配置となる形状をシミュレーションした結果として、彫刻的な外観と、遊び心で満たされた内観を同時に実現している。下に示したリバプールの事例とは趣を異にし、柔らかで軽やかなイメージを獲得しており、これも鋼板をどのように構造デザインに生かすかの参考例として頭に入れておきたい事例である。

さすが、Ney & Partners  なお、本BLOG/2008年版の2008.11.12にNey氏の講演会(at 東大)の様子をアップしているので、興味のある方はどうぞご覧ください。 2010.04.11

Paradise Street Footbridge、Liverpool


リバプールの再開発地区に2007年完成した歩道橋。

形式は支間60mの鋼製箱桁のようなもので、その部材構成に、構造合理性を確保しながらも、ひとひねりもふたひねりも建築的工夫が施されているのが特徴。結果、彫刻的な外観と、十分な遊び心で満たされた内観を同時に実現している。鋼板をどのように構造デザインに生かすかの参考例として頭に入れておきたい事例である。

さすが、Wilkinson Eyre Architects  2010.04.11

Larvik市 bridge design コンペの勝者決定


ノルウェーのLarvikで検討されていた高速道路の線形改良に伴うデザインコンペの結果が出たとのこと( from Happy Pontist )

優勝案は、最終比較3案の中では最も目立たない斜張橋案。3案から選べといわれれば、私もこの案を選ぶが、タワーを傾ける必要は無い場所と思う。すくっと立ち上がるスレンダーなタワーの方がこの場所にはあっているように感じる。いずれにせよ、妥当な案が選ばれている。

なお、この道路改良はおそらく、欧州高速道路としての基準を守るための改良事業と思われるが、種々の地形改変に伴うランドスケープデザインのコンペも同時に実施されている。結果公表のドキュメントもしっかりしており、いろいろと勉強になる事例である。 2010.04.04

Maribor市 footbridge design コンペの勝者決定


北にオーストリア、西にイタリア、南にクロアチア、と接するスロベニア共和国の第2の都市Maribor市で開催されていた歩道橋コンペの結果が出たとのこと(from HappyPontist)

優勝案は、レムコールハース設計のロッテルダム美術館の遊歩道の構造にヒントを得たような、細い斜め柱を脚に用いた連続ばり構造。背景となる古いアーチ橋のイメージを邪魔しない点が好まれたのだろう。無難な選択だと思う。

準優勝案は川を一またぎする複合ラーメン橋で、これもまた正統派の提案だと思う。多分、河岸部でのコンクリート橋台のボリューム感や山なりの縦断勾配が、背景となる古い橋との相性の点で減点要素となったのではないだろうか? 
いずれにせよ、準優勝は自国の会社ながら、優勝者がスペインの会社であり、ヨーロッパの国境は確実に薄くなりつつあるのだなと、別の意味での感慨も禁じ得ない。 2010.04.04

St. Patrick’s bridge design コンペの勝者決定


3.22、カルガリー市で開催されていた歩道橋コンペの勝者が RFR (Paris, France) and Halsall Associates Limited (Calgary) に決定したようだ。(コンペ概要は2.11付けのblog参照下さい)

無難、かつ妥当なところに落ち着いた、というのが私の感想である。
 2010.03.24

著名歩道橋のコスト

カルガリー市(カナダ)に計画中のカラトラバ設計の歩道橋のコストについて、いろいろと議論が起きているみたいだ。建設当局は右表を出して、世界の著名歩道橋に比べても決して高くないと主張している。

1カナダドルを100円と設定(最近のレートは85円前後)すると、この表の数字はそのまま億円、"0"万円m2と置き換えられよう。すると、ゲイツヘッドで540万円/m2(2002)、ロンドンミレニアムブリッジで340万円/m2(2000)、問題となっている橋で304万円/m2(2008)となる。

個人的な経験でしかないが、日本における歩道橋の価格は高いところで100万円/m2といったところだから、やはり高い橋であることには間違いないと思う。

ちなみに各橋のイメージは、Reddinng(Sundial Bridge)=、Esplanade Riel=である。 2010.02.16

TENSAIRITY® by Dr. Mauro Pedretti

aa

TENSARITY=Tension + Air + Integrity とは、空気膜構造と引張材(場合により圧縮材)を組み合わせて、長支間軽量構造を開発している AirLight 社の登録商標である。原理そのものに、目新しさはないが、事業として展開しているところが、「なんか夢があるな」と共感できるところである。
大きな屋根、歩道橋や仮設橋などに応用が利くとして広報しており、フランスのスキー場での適用例がある。また、ETHZでの空気膜をウェブに見立てる実験などの写真がネットからも拾える。楽しそうな実験でうらやましい限りである。
なお、類似の構造として、日本では、世界初のチューブ型空気膜構造でもある1970年の日本万国博覧会での富士パビリオンが著名である。 2010.02.14

St.Patrick’s Island(Calgary)歩道橋コンペ 【Shortlist】



これらの画像は、カナダ・カルガリー市のSt.Patrick’s Island 歩道橋のコンペにおいてエントリーされた33案から、選ばれた最終3案をHPからDLしたものである(map)。 

最終3案は、#1)曲線3叉路型の斜張橋、#2)Douglas川のと同じようなストレスリボン(吊り床版)橋、#3)3連のアーチ橋、といった具合に、いろいろな要素がバッティングしないように選ばれている。どの案になっても、それなりの納得が得られるであろう3案が選ばれたと言える。

個人的には、#2が好みだが、#3も悪くはない。#1は避けたいところだ。この2月25日に公開プレゼンテーションが予定されている、とのことで、結果が分かれば、また紹介したい。 2010.02.11

American Tobacco Trail 整備計画に伴う歩道橋デザイン検討
(2008.11 デザイン方針決定、2009.12最終案確定、2011建設完了予定)



これらの画像は、アメリカノースカロライナ州ダーラムに計画(map)されている American Tobacco Trail 整備計画に伴う歩道橋コンペ結果HP等からDLしたものである。
橋のデザインについては、市民を巻き込んで議論されたようであるが、最終的には上図右に示す2案に絞られ、公共サイドから維持管理面など総合的に判断して、アーチ案が選択された、とのこと。(斜張橋はケーブルの維持管理が大変との説明がなされていた。)
いずれの2案も「off-the-shelf bridges」でなく、「custom-design」であることで市民の納得感は確保されていた模様。

最終的には上図左に見るようにアーチリブがRCからメタルパイプ(アーチ支間は約74m)に変更されて、いよいよ建設が始まるようだ。高速道路を跨ぐ工事の観点から見れば至極妥当な変更だろう。なお、詳しいことはわからないが、計画段階で、橋のデザインを得意としている「Steven Grover & Associates」と超大手コンサルタント「Parsons Brinkerhoff」との共同体制、詳細設計は「Parsons Brinkerhoff」一社が担当しているようだ。 2010.02.11

鉄道廃線跡 遊歩道整備計画に伴う 歩道橋コンペ (2008.10 結果発表済)



これらの画像は、イングランド北西部のランカシャー州を流れるDouglas川を跨ぐ位置(map)に計画された、廃線跡を遊歩道にする計画の一部をなす歩道橋コンペ結果HPからDLしたものである。
国際コンペとしてエントリーは110を数えたようであるが、最終選考に残った7案から選ばれたのは、かの有名なアラップ事務所とJDA建築事務所 のJV、とのこと。

シルエットはシンプルながら、スレンダーな外観を獲得するための構造はさすがに凝っていて、自定式吊り床版を中央の鋼製ラーメンで支えて、上下方向の力を相殺させつつ、多少なりとも吊り床版からの水平力を均衡させる伝達材としても用いている。と解釈した。

吊り床版を巧みに用いたS.Calatravaのシュテデルホーフェン駅歩道橋にヒントを得たに違いない、と勝手に連想している。 2010.02.10

ダブリン郊外のLRT橋梁コンペ (2009.02結果発表済)


この画像は、アイルランドの首都ダブリンの郊外を環状に走るLRT(MetroWest)がLiffey Valley(map)を跨ぐ橋梁コンペ結果HPからDLしたものである。フォスターなどの強敵をかわして勝利したのは、イギリスに本拠を置くコンサルタントBuro Happold とパリに本拠を置く前衛的でサスティナブルな建築に挑戦しているExplorations Architecture のJV、とのこと。

風光明媚な場所を生かすため歩道の設置が条件になっていたようであるが、最後に残った5橋を見比べると、この橋が一番エレガントで渡りたくなる要素に勝っていた。テムズ川ミレニアムブリッジの構造構成にヒントをもらったとも思われるこの橋に負けたフォスター(アーチ案)の胸中はいかに?いずれにせよ力作ぞろいのコンペで主催者(鉄道事業者)は大喜びのようだ。

なお、Buro Happold and Explorations Architectureのチームは、同じ頃に「foot and cycle bridge across the River Soar in Leicester」のコンペにも、規模は遥かに小さいものの、同じような構造構成の橋で勝利している。 2010.02.08

Forth Replacement Crossing プロジェクト(2016完成予定)


フォース湾に3本目の架橋プロジェクトが進行中である。設計はまたもやDissing+Weitlingで、支間650m×2径間の連続斜張橋で全長は2.6kmである。老朽化が進むフォース道路橋(吊橋)に代わるものとして計画されており、新橋開通後、現フォース道路橋は歩行者、自転車、そして公共交通に限定されて利用される見込みだそうだ。フォース湾を歩いて渡れるというのは、面白そうだ。世界中の橋オタク?が右にフォース鉄道橋、左に新しい橋を見にやってくるだろう、と思う。それにしても、Dissing+Weitling のデザインは無駄がなく美しい。Scandinavia-Design のひとつの極みではないだろうか? 2010.02.08

Fehmarn Belt bridge プロジェクト(2018完成予定)


ドイツとデンマークを結ぶ1963年完成のFehmarnsund橋(左写真)を渡った,その延長上に計画された、支間724m×3径間の連続斜張橋を中心とする、全長約19kmの架橋プロジェクト (map) である。詳しくはオフィシャルHPをご覧ください。なお、設計はDissing+Weitling
この橋ができると、そこからFarø Bridgesを渡ってコペンハーゲン、さらにØresund_Bridgeを渡ってストックホルムにいたる、いわば、北欧の本四架橋の完成である。2010.02.08

Pedestrian bridge Esch by Ney & Partners 


ルクセンブルク南部の鉄工業の中心地「エッシュ」市街において、線路で分断されてきた駅と公園(map参照)を結ぶ歩道橋で、ベルギーの構造デザイナー,ローラン・ネイ事務所の新作である。トラス補剛の箱桁構造とでも言えそうな巧みな構造で、モーメント分布を表現したような外観が印象的である。(写真はHPからDL)
ローラン・ネイ氏の来日講演時の様子は、橋梁と基礎平成21年4月号に「Freedom of Form finding ─ローラン・ネイの思考─」として報文があるので、興味のある方は参照されたい。
(当BLOGでも 2008.11.12 にその講演会の印象を記している) 2010.02.07

Tree Top Walk 〜新たな視点場の創造〜


写真(HPからDL)はユーカリ の巨木 (Vally Of Giants )を楽しむ為の橋で、地上約40mに架かっている。場所はオーストラリア/パースより約400km南にある国立公園の中にあって、1996年から供用(有料)されている人気のスポットである。この橋の成功に刺激されたのかどうかはわからないが、パース近郊の公園シドニーの南のIllawarraシンガポールといった所で、類似のコンセプトの橋を目にする機会が、最近増えている。
よく言えば、「新たな視点場の創造」であり、別の見方をすれば、自然の中に、フラットな歩行空間という都会的な快適性を挿入する時代感覚が増大しつつある、とも言える。2地点間の接続という機能を超えて、新たな視点場の体験を提供する目的の歩道橋がこれからも増えて行く気が、とてもする。 2010.01.11

シカゴ美術館 新館に接続する歩道橋


2009年5月にオープンしたシカゴ美術館新館(設計レンゾ・ピアノ)は道路を隔てた隣の公園と歩道橋(Nichols Bridgeway)で接続されている。(写真はHPからDLしたもの)
跨いでいる道路はそのままミシガン湖に向かっているので、橋の上からの眺めが良さそうだ。橋のデザインは至ってシンプルだが、公園から美術館へ向かう途中にミシガン湖を見せる効果がこの橋のデザインの味噌だと、勝手に独り合点している。 2010.01.10

ヴェネツィアの新交通システム(2010年2月開通予定)


車道がないヴェネツィアの街でも、イタリア本土とは長い橋で接続している。その橋を渡ってきた車は、街はずれの駐車場に向かい、徒歩あるいは水上バスで街の中心部に向かうシステムとなっている。
今、その最大規模のトロンケット駐車場から鉄道駅にほど近いローマ広場までを結ぶ新交通システムが建設中である。(既に工事は終わり、試運転の最中と思われる) 
そうか、2009.10.10に紹介したカラトラバの橋は、このような計画とも連動していた訳ですね。やっと納得出来ました。ここに地図を載せておきますので興味のある方はどうぞ。(写真はすべて、http://www.apmvenezia.com/web/index.phpから引用しました) 2009.12.02

英国の著名水路橋で水抜き作業


ポンテカサルテ橋で、清掃のため内部の水を抜く作業が行われたとのニュース。(記事と側面景の写真はAFP BB Newsから)
この橋はイギリスの著名な産業遺産であり、現在は観光のための水路橋として現役であり続けているもので、当ブログでも2009.05.04に記念切手を紹介し、historical bridge(1805)にも紹介している。
イギリスの通潤橋だと思ったのは私だけではないだろう。 2009.11.29

シドニー ハーバーブリッジ で朝食を


2009.10.25、シドニーの名産品を紹介する目的で、ハーバーブリッジの交通を止めて朝食を食べるイベントが開催されたそう。(写真は時事ドットコムより引用)これから毎年10月に行い名物にするらしい。New York City MarathonでのVerrazono-Narrows Bridgeも壮観(写真はここから引用)だが、橋の上を広場として利用する、この発想もおおいに納得である。
2009.11.14

Pont du Gard の手前に紙管橋


今更ながら、2007年夏の話題を。
「ローマ時代の石の橋と、紙の橋という非常に面白い対比になっている。紙は非常に長持ちするものなので、永久的に使うことができる。我々は、偏見を捨て去る必要があると思う」とは建築を指導した坂茂氏の言葉。建設は日本とフランスの学生が担当し、6週間公開されたそう。何とも刺激的でうらやましい話だ。こちらにビデオニュースもあります。(写真はAFP BB Newsより引用
2009.11.14

放っておかれた橋


鉄は錆びる。錆びて朽ちる。この当たり前のことを見る機会はそうない。しかし、写真に示す耐候性鋼材で製作された橋は、この写真を撮った日から5ヶ月後に、30年を待たずに朽ちた。しかし、
学生さんはよく見て欲しい。雨のかかる外側のさび具合と雨のかからない内側のさび具合を。海岸に近いこの橋では、塩分は風に乗ってやってくる。埃が付着するように鉄板に張り付き、鉄を蝕んで行く。雨はその塩分を洗い流す役割を果たしたのである。ここから、いろんなことを考えてみて欲しい。        2009.11.10

Calatrava at Venezia


1年前の2008年9月、ベネチアにカラトラバの橋(Ponte della Costituzione)が開通したが、建設費が予算の4倍とか、景観にそぐわないとかの批判に晒されて開通式が中止になったそうだ。(写真はAFPBBNewsから引用)
場所はベネチア駅(写真左側)にほど近いところで、川を渡った対岸にバスセンターや駐車場、レンタカー屋があるベネチアで唯一の車でアクセス出来る場所で、歩行者動線として必要と判断したのだと推察する。今まで川を渡るだけの用事の場合も、水上バスを使わざるを得なかったので、その点は便利になったであろう。
でも、そう考えると、他の橋と違って、大きなスーツケースを持った人がこの橋を利用することが十分考えられるが、その利便性に配慮する様な斜路はなく、階段オンリーというのはどうかとは思った。
いずれにせよ、写真で見る限りは、十分に美しい橋に見えるので、本当の所はどうなのかを現地に行って確かめたいところだ。 2009.10.10

M+M Design 事務所 初の作品集

日本における橋梁デザインの開拓者であるエムアンドエムデザイン事務所初の作品集が出版された。
解説付きで紹介される16の橋を見、9のコラムと1の対談集を読むことで、事務所を率いる大野美代子さんのデザイン哲学が理解される巧みな構成になっている。文章は平易な表現に気が使われており、橋の初心者から玄人まで、大いに楽しめる本に仕上がっている。一読をお勧めします。
(鹿島出版会、3400円) 2009.09.26

Le Viaduc des Arts / Paris


The High Line の話が出たついでに、パリの「Le Viaduc des Arts 」をここに紹介しておく。(写真のみで失礼)   2009.08.15

The High Line / NewYork


ニューヨーク都心部で進められていた、廃線になった鉄道高架橋を再開発する空中公園、ハイライン(The High Line)がオープンしたそうだ。計画概要は「こちらの映像」がわかりやすい。廃線後の再開発と言えば、横浜の汽車道や、赤煉瓦倉庫から山下公園までの鉄道高架跡の遊歩道、そしてパリの「Le Viaduc des Arts 」がすぐに思い浮かぶ。いずれも都心の空中散歩道のコンセプトは同じ緑の遊歩道である。 いずれ、神田から四谷あたりまでの中央線(総武線)も地下化して、跡地となる鉄道高架をこのようなイメージで歩行者に開放すると面白いと考える今日この頃である。(写真はHPから引用)   2009.08.15

書籍紹介13:造型と構造と / 山本学治建築論集2


学生時代に、ギーディオンの「空間・時間・建築」とともに、構造とデザインを考えるきっかけを作ってくれた本。マイヤール、ネルビ、アラップの構造についての明快な解説に心を踊らせたものです。特にアラップのダーラムの徒歩橋における、計画、断面設計、建設方法への感動と尊敬の念は今もって続いている。(鹿島出版会 2200円) 2009.06.19

ブルネル生誕200年記念コイン


下記に示す講演会に関連して、ブルネル生誕200年記念2ポンドコインのセットを紹介する。
2009.06.15

色彩のチカラ


西新宿を歩いていた時に、見慣れたベージュではなく、シックな色彩に塗り替えられた歩道橋に出会った。周辺の街並みに溶込んでいて、歩道橋の(いやな)存在感が随分と和らいでいた。色彩だけで、こんなに印象が変わるのかと素直に驚き、シャッターを押した次第。 2009.05.18

コインから考える「公共事業(技術)広報」


イギリスの1ポンド硬貨から2004年〜2007年の4年間に発行された橋シリーズ、ならびにブルネル200年記念2ポンド硬貨を紹介する。産業遺産の橋だけでなく、ゲイツヘッドミレニアム橋のような新しい橋も取り上げられているところに着目したい。橋という構造物が生活文化の一部になっているようで、羨ましい限りである。ちなみにフォース橋とメナイ吊橋はhistoric bridges に写真があるので興味を持った方はどうぞ。 2009.05.04

切手から考える「産業遺産」と観光


イギリス産業遺産切手(1989年発行4枚組)からアイアンブリッジとポンテカサルテ?水路橋を紹介する。最近、長崎の軍艦島が観光のために一部開放されたように、日本でも産業遺産を観光資源とする動きが目立ってきたが、そのお手本となるのがイギリスである。ただの切手としてみるだけでなく、その背景を知れば、日本の観光振興にも大いにヒントをくれるだろう。ちなみに上記2橋ともhistoric bridges に写真があるので興味を持った方はどうぞ。 2009.05.04

書籍紹介3:BRUCKENBAU 〜博物館で学ぶ橋の文化と技術〜

学生さんが、橋の構造や文化を気軽に勉強するに最良の教科書だと思う廉価な本です。ミュンヘンにあるドイツ博物館「橋のコーナー」の学習ガイドブックを日本語訳したものです。世界中の橋を対象に文化、歴史、技術、などを豊富に紹介しており、橋とは何かを考える基礎力を提供してくれます。橋を志す人はこの本の内容は教養としても身につけておいて欲しいものばかりです。(ディルク・ビューラー(ドイツ博物館)編著、鹿島出版会、1800円) 2009.2.28

書籍紹介2:空間 構造 物語 ~ストラクチュラル・デザインのゆくえ~

学生さんが、橋や建築の構造を気軽に勉強するに最良の教科書だと思う、第2弾です。建築の絵本に比べて、一つ一つの図版は小さくなりますが大量の写真と図面イラストと共に、わかりやすく熱い解説が読みごたえがあります。「構造技術者は、自分の技術知識に加えて、直感あるいは創造的発想を動員しなければならない」とは推薦者のヨルク・シュライヒ氏の言葉ですが、その思想で全編が貫かれています。(斎藤公男著、彰国社、3600円) 2009.2.28

書籍紹介1:建築構造のしくみ 〜力の流れとかたち〜

学生さんが、橋や建築の構造を気軽に勉強するに最良の教科書だと思うので、ここに紹介する。大きなイラストを眺め、簡潔な解説を読むだけで構造の本質が見えてくる、様な本だ。出版社のコピーには「魅惑的な古今の建築物を「力の流れ」からとらえ、その「かたち」のもつ安全性と、美しさを支える構造と工法の合理性をわかりやすく解明する」とある。日本の伝統建築についても理解が深まります。(川口衛、他著、彰国社、2500円) 2009.2.28

撤去された歩道橋の海外利用の話

近年、全国各地で、高度成長期に建設された横断歩道橋が撤去され始めている。学童の安全確保の役割を終えたため、維持管理費の縮減のため、景観改善のため、など理由は複合的だ。そんな歩道橋を海外で困っている方々のために活用しようという「人と人との架け橋づくり実行委員会」なる活動が大阪にあることを知った。活動費の一部は募金でまかなうという。実行力に拍手すると共に、勝手ながら、広報の一助になればと思い、ここに記しておきます。 2009.2.22

Frei OttoのMechtenberg橋

フライ・オットーHPを見ていたら、面白い歩道橋が載っていたので,ここにメモしておく。Pedestrian footbridges at the Landschaftspark Mechtenberg in Gelsenkirchen, Germany 2003と紹介されている。構造は写真の通り、工事現場でよく使われる単管パイプ(この橋のは丸鋼)を組み合わせたような実に質素で合理的な構成でありながら、どこかユーモアというか、計算され尽くされたというか、絶妙のバランス感覚が心地よい。ケンブリッジ(英国)の木橋:数学橋とは部材の組み方が同じである所も興味深い。愛知万博(2005)のデッキに似ているのは偶然か? 詳しいデータはstructurae(id=s0016842)でどうぞ。  2008.11.23

Laurent Ney 講演会「Freedom of form finding」

本郷・東京大学工学部1号館15号講義室でローラン・ネイ氏の講演会を聞いてきた。intuitionを大事にして、そこで得られたイメージをengineeringを駆使して形にするのが、彼のやり方と受け取った。冒頭ではフォース鉄道橋(1889)ケベック橋(1919)を比較して、同じ構造系だが、彼はフォースの形に惹かれる、と言っていた。全く同感で私もこの比較はよく判る。形が生まれる際の背景の違い(産業構造、設計条件など)が形に出ていると思う。マイクシュライヒ氏も言っている、形に文化が宿るということは、設計者のintuitionの質に因るのだということを強く再確認した、刺激的な講演会であった。intuitionは個人の教養レベルに左右されるので、日々これ研鑽あるのみですね。  2008.11.12

 

BLOG archives

紹介書籍等の
Amazon shop へのリンク集です

書籍等の紹介ブログのアーカイブです

橋(bridge)関係ブログのアーカイブです

Mobolity関係ブログのアーカイブです

講演会関係ブログのアーカイブです